コラム
両利きの経営によるDX時代の改善と成長戦略
「両利きの経営」を耳にしたことはありますか?両利きの経営とは、企業の成長に欠かせないイノベーションのための経営理論です。このコラムでは、「両利きの経営」の理論をデジタルトランスフォーメーション(DX)に応用し、企業が直面するビジネス環境における課題の改善と成長のバランスについて考察します。

両利きの経営とは、既存事業の維持と成長を確保しながら、新しいイノベーションを同時に追求する戦略アプローチの一つです。この概念は、チャールズ・A・オライリーとマイケル・L・タッシュマンにより紹介され、その効果は※『両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り開く』という著作で広く認識されるようになりました。
企業が成功を続けるためには、既存のビジネスモデルを洗練させつつ、新たな市場や技術に目を向ける必要があります。「知の深化」と「知の探索」は、この戦略の二つの重要な柱です。
知の深化では、企業は現在の事業や製品を更に発展させ、業績を高めることを目指します。これにより、既存の市場での競争力を保ちつつ、安定した収益を確保することができます。一方で、知の探索では、新しいアイデアや市場への進出に焦点を当て、将来的な成長のための土台を築きます。
多くの企業が直面する問題は、これら二つの活動をどのようにバランス良く組み合わせるかという点にあります。過去の成功に縛られることなく、新しいリスクを受け入れ、イノベーションを通じて新たな成長機会を探求し投資することが、長期的な成長の鍵となります。デジタルカメラの登場によってフイルム事業が衰退した富士フイルムは、既存技術を活かして医療や化粧品分野へと事業を拡大し、新たな成長機会を見出しました。このように、両利きの経営は、企業が直面する危機を乗り越え、新たな成長を実現するための鍵となり得るのです。
現代のビジネス環境は常に変化しており、その先を予測することは非常に困難です。このような状況の中で、企業が生き残り、成長を続けていくためには、柔軟性と適応力が求められます。「両利きの経営」は、まさにその答えの一つと言えます。知の深化と知の探索を同時並行で進めることで、企業は持続可能な成長を目指すことができるでしょう。
※【出典】チャールズ・A・オライリー,マイケル・L・タッシュマン 『両利きの経営(増補改訂版)ー「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』東洋経済新報社,2022

一方で成長のDXでは、デジタル技術を駆使して新たなビジネスモデルを創出し、市場での新しい成長機会を探求するアプローチです。これには、新規事業の立ち上げ、新たな顧客層の開拓、革新的な製品やサービスの開発が含まれます。
改善のDXと成長のDXは、それぞれ企業の持続的な成長と成功にとって重要な役割を果たします。難易度の高い取り組みのようにみえますが、適切な戦略を持つことで実現可能です。
まず、全社でDXのビジョンを共有することが大切です。これを基礎に、改善と成長の両方を達成するための具体的な戦略を立てます。そしてそれらの戦略を実現するために、組織全体でデジタルファーストの文化を醸成することが求められます。部門を超えたチームが一緒になって働ける柔軟な組織構造を作り、新しいアイデアや挑戦を受け入れる文化を育てることが大切です。さらに、クラウド、AI、ビッグデータなどの先進技術を積極的に取り入れましょう。従業員が最新の技術トレンドについて継続的に学べる環境を整えることも重要です。最後に、改善のDXと成長のDXの進捗を測定するための適切なKPIを設定し、戦略の効果を定期的に評価し、必要に応じて調整を行います。
改善のDXと成長のDXは、それぞれ企業の持続的な成長と成功にとって重要な役割を果たします。両利きのDXを成功させるためには、2種類のDXの本質を理解し、組織が一体感をもって取り組むことが重要です。
いかがでしたでしょうか。自社のマネジメントについて、少しでも考えるきっかけになれば幸いです。弊社では、コールセンターに関する質問を受け付けております。どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。