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コラム
AI/RPAの活用で組織の心理的安全性と創造性を高めよう
近年の急速なITテクノロジーの進歩に伴い、私たちの仕事のあり方は転換点を迎えています。特にオフィスワークにおいて、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI(人工知能)による業務プロセスの効率化・自動化がもたらす影響は今後さらに大きくなると予想されます。
RPAとAIの違いは、自律的な判断ができるかどうかです。RPAがデータの入力などのあらかじめ設定された手順やルールに従って作業を自動化するのに対し、AIは学習したデータの識別・予測・実行までを行います。RPAは私たちの「手」、AIは私たちの「脳」を代替するものと言い換えられるでしょう。
私たちの手や脳の代わりになると聞くと、「AI/RPAに人間の仕事が奪われてしまうのでは?」という不安・懸念が湧いてくるかもしれません。実際、2015年の段階で日本の労働人口の49%が技術的にはAIやRPAで代替可能になると推計されています1)。
調査対象となった601種の仕事のうち、たとえばIT保守や経理事務、データ入力、会計監査、情報管理などはAI/RPAによる代替可能性が高いと予測されました。一方、人間のフィジカルやメンタルに直接関わる仕事や、創造性が求められる仕事についてはAIやRPAによる代替可能は低いと予測されています。
では、ルーティンワークやマニュアルジョブが中心となるオフィスワークはAI/RPAに取って代わられるのでしょうか?
本コラムでは、私たち人間の業務や役割がAI/RPAを導入することでどのように変化するか、改めて考えてみたいと思います。
目次
AI/RPAの導入で期待できる一次的なメリット
AI/RPA導入で想定される組織・社会の変化とは
AI/RPAの導入で期待される心理的安全性と創造性の向上
AI/RPAの導入で期待できる一次的なメリット
AI/RPA導入によるメリットとして、次の3点が挙げられます。
①生産性の向上:RPAでルーティンワークやマニュアルジョブを自動化すると、従業員はより価値の高い業務に時間と労働力を割けるようになり、生産性の向上につながります。これがRPA導入を検討する際に思いつく第一のメリットであり、主な目的と考えられます。
②ヒューマンエラー回避と品質向上:人間は必ずミスをするため、これまではヒューマンエラーが起こることを前提に防止策が講じられてきました。しかし人間がミスをしてしまうプロセスをRPAが代替することでヒューマンエラーが回避され、業務プロセス全体の品質が向上すると考えられます。
③コスト削減と業務プロセスの効率化:RPAは人的リソースを節約し、業務プロセス全体のコストを削減します。また、作業時間の短縮、人の業務時間外も含めた24時間稼働も可能となるため、業務プロセス全体が効率化されます。
上記の3点はAI/RPA導入による一次的なメリットといえますが、残念ながら「AI/RPAに人間の仕事が奪われてしまうのでは?」という不安を拭い去るものではありません。実際、総務省の情報通信白書は、生産性の向上、品質向上、業務プロセスの効率化などにより、雇用の基礎を構成するタスク量は減少すると予想しています2)。
AI/RPA導入で想定される組織・社会の変化とは
では、AI/RPAの導入によるタスク量の減少は雇用に対してどのような影響を及ぼすのでしょうか。
総務省の情報通信白書では、①雇用の一部代替、②雇用の補完、③産業競争力への直結による雇用の維持・拡大、④女性・高齢者等の就労環境の改善が想定されています2)。
このような雇用の変化は、必ずしも人間の仕事を奪うものではありません。むしろ一部のタスクをAI/RPAが代替すること(①雇用の一部代替・②雇用の補完)によって、人間は知的で創造的なタスクに移行でき、これまでに存在しなかった新しい価値をもつ業務が創出されると考えられます(図)2)。
AI/RPAの導入で期待される心理的安全性と創造性の向上
AI/RPAの導入によって期待される一次的なメリットとして、①生産性の向上、②ヒューマンエラー回避と品質向上、③コスト削減と業務プロセスの効率化をご紹介しました。その結果として人間が担うタスク量が減少し、①雇用の一部代替、②雇用の補完、③産業競争力への直結による雇用の維持・拡大、④女性・高齢者等の就労環境の改善が予想されますが、組織内においてはどのような変化が期待されるのでしょうか。
たとえばAI/RPA導入時には、現場の課題をAI/RPAで解決するために業務の洗い出し・見直しを行います。この作業はそれぞれの現場のニーズに応じて行う必要があるため、現場の従業員が新たなタスクとして対応することになります。このプロセスにより、これまで不透明だった業務内容の透明性が担保されます。
近年、従業員の生産性を高め、組織として最大のパフォーマンスを発揮しうる概念として「心理的安全性」が注目されていますが、組織や業務の透明性は心理的安全性の向上においてきわめて重要です3)。AI/RPA導入によって作業内容が可視化され、ブラックボックス化・属人化が解消されることで作業の急な代替や引き継ぎも容易になると考えられます。特に、前項「AI/RPA導入で想定される組織・社会の変化とは」で挙げた④女性・高齢者等の就労環境の改善は、こうした透明性が担保されることで大きく前進するはずです。
さらに、AI/RPA導入により削減された時間を単なるコストカットと捉えるのではなく、空いた時間を新しい価値をもつ業務へ転換し、人間にしかできないイノベーションや創発に繋げることも重要です。AI/RPA導入の目的である生産性の向上は、組織の変革が促され、心理的安全性と創造性が向上した結果として実現すると考えられます。
AI/RPAは私たち人間の目的を叶えるための手段であり、有用なツールとして利活用していくべきものです。過度に恐れず、心理的安全性と創造性、生産性の好循環を生む組織のあり方を考えるきっかけの1つとして、AI/RPAを捉え直してみませんか?
参考文献:
1)株式会社野村総合研究所.ニュースリリース(2015年12月2日)[https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf]
2)総務省.平成28年版情報通信白書.第1部 特集IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータが創造する新たな価値~.第3節 人工知能(AI)の進化が雇用等に与える影響.[https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/pdf/n4300000.pdf]
3)Edmondson A. Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams. Adm Sci Q. 1999; Vol.44: pp.350-83.
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