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~創造力が変革に寄与する~ 探すことに慣れてしまった私たちの「観る力」

気がつけば私たちの毎日は「検索」という行為であふれていないだろうか。
パソコン・スマホでの調べものはもちろん、今やネットとつなぐことのできるテレビも検索ツールの一つとなった。会社でもリビングでも検索画面を前にして、朝から晩まで私たちは情報を探し続けている。

仕事場では、最新データを集める、企画書の題材を探す、訪問先のアクセスを確認するなど、業務の大半は検索ツールにお世話になっている。かたや家では、明日の天気をチェックし、冷蔵庫を眺めながら晩ご飯のレシピを調べ、日用品を探して注文し、歯が痛くなれば近所で口コミの良い歯医者を探し・・・と枚挙にいとまがない。
コロナ禍は家庭での「検索」行為をさらに加速させたに違いない。ただこの便利な道具のおかげで私たちは無駄な時間をかけずとも、目的とする答えや情報を適確かつスピーディーに手に入れることができる。どうやらこの恩恵から私たちは離れられそうにない。もはやカーナビなしでドライブには行けないということだ。
そうした毎日を送る私たちの眼は今や「検索モード」が支配し、「純粋によく観る」という行為が減ってきているらしい。そうして検索ばかりしていると、自分の求めている答えや情報しか目に入らなくなり、豊かな感性による気づきの力が衰えていくと言われているのだ。

そんな中、絵画を観ることがビジネスパーソンのスキルアップの一つとして活用されているという。アートとビジネスパーソンは不思議な組み合わせに思えるかもしれないが、昨今、ビジネスに携わる人たちがアートを学ぶことの有効性を謳う書籍も相次いで出版され、注目も高い。米国イェール大学で開発された「絵画観察トレーニング」はその一つ。ファシリテーターとともに絵画に描かれている数多の情報をじっくりと観察し、そこからさまざまな意味を見つけ出していくというワークを通じて、多様な解釈を生み出す能力、豊かな創造力などを高めていく。


先行きが不透明で将来の予測が困難といわれるVUCA時代。これからのビジネスリーダーは想定される答えを求めて動くのではなく、変化する目の前の状況を観察し、そこから気づき思考し、創造性を発揮して、自分なりの答えを見つけ出すことが求められるのではないだろうか。つまり明確な答えがないビジネス環境に応じて、「事業」や「組織」を柔軟に変革していく能力である。
例えば組織一つ作りあげるにも優れたメンバーの編成が欠かせない。となればメンバー一人ひとりの適性やスキル、成長性を見極める眼も必要だ。
ある時、お客さまと電話で応対していたある事務スタッフを見ていたリーダーは、彼女の応対ぶりを観察し、営業の適性に気づいた。営業に抜擢後は業績に大きく貢献するメンバーとなったらしい。見た目の経歴や専門分野だけにとらわれていたなら、こうした変化は起きなかったかもしれない。

さて、私たちの「検索」に追われる毎日は、まるで高速道路をわき目もふらずまっしぐらに走り続ける車のようにも見える。たまにはハイウェイを降りて、周囲に広がる美しい景色をゆっくりと眺めてみるのはどうだろう。何か新たな発見があるかもしれない。ただし帰りは迷子にならぬようカーナビをお忘れなく。

参考文献:神田房枝『知覚力を磨く 絵画を観察するように世界を見る技法』、ダイヤモンド社、2020年


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