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❒講師インタビュー:(前編)VUCA時代に求められる新しいリーダー像

目次

企業に変革をもたらすリーダーシップとは?
なぜ新しいリーダー像が求められるのか
新しいリーダーに必要な「経営者視点」
企業の変革に向けた危機感の醸成
ビジョンは企業の変革を駆動する

前編:企業に変革をもたらすリーダーシップとは?

VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代といわれる今、不確実性が高く将来の予測が困難な状況を切り開いていくリーダーシップが求められています。
今回は、関西ビジネスインフォメーションのパートナー講師であり、「次世代リーダー育成プログラム」を共同開発された西田泰典氏をお招きし、VUCAの時代に求められる新しいリーダー像について前編・後編にわたりお話を伺いました。

なぜ新しいリーダー像が求められるのか

―  ビジネス領域でVUCAがキー概念となっていますが、先生は近年の経営環境の変化についてどう実感されていますか。
西田 VUCAはもちろん、人口減少や経済成長率から考えても経営の舵取りが非常に難しい時代だと実感しています。日本の総人口は2008年をピークに減少に転じ、2030年には1億1千万人台、2050年には1億人を下回ると予想されています。ビジネスにおいて、人口の減少は大きなインパクトとなります。一方、日本の経済成長率は高度成長期に年平均10%を越え、バブル崩壊・リーマンショックを経て1%台まで低下しました。こうした背景を踏まえると、日本企業の経済的成長が今後飛躍的に向上することはまず期待できません。
 さらに難しいのは、VUCA時代の経営者に求められるのが経済利益だけではない、という点です。今この時代に昭和の名経営者と謳われた偉人たちが経営の舵取りを任されても、成功を収められるとは限りません。VUCA時代の企業は、社会的価値の創出によって自社の発展を目指すことが求められます。ステークホルダーからの支持を得るには、国連が持続可能な開発目標として掲げる「SDGs」や、環境・社会・ガバナンスで企業価値をはかる「ESG」の視点が必要不可欠です。
こうした経営環境の激変やグローバル化に伴い、求められるリーダー像は大きく変化しました。目まぐるしく変化する経営環境に柔軟かつ迅速に適応し、企業価値を向上させながら中長期的にビジネスを展開する経営人材。日本の企業にとって、10年後、20年後の事業・組織を導く未来の経営者候補をいかに育成するかが喫緊の課題なのです。

新しいリーダーに必要な「経営者視点」

―   新しいリーダーに求められる能力やスキル、要件にはどのようなものがありますか。
西田 私がリーダーシップの要件として考えているのは「経営者視点」と「変革力」です。
「経営者視点」は、①視座を高めること、②視野を広げること、③視点を変えること、と言い換えられます。たとえば課長職にある人が「課長の立場で成果を出せばいい」という考えで発想すると、価値の高いアウトプットは生まれません。課長が部長の立場になって発想する、あるいは事業部長の立場になって発想する。こうして自身のポジションよりも高い視座から事業・組織の全体を俯瞰することで、これまで見えていなかった視野が広がり、多様な視点が得られます。
 強い組織の特徴として、マーケティング・企画・開発・製造・営業などの縦割りの職能が優れていることが挙げられます。ただし、各職能の優秀さは組織の強さとイコールではない、という点に注意が必要です。各職能が分断され、硬直化した状態では職能横断的な交流や議論、新しい発想は生まれません。よりオープンなイノベーションが目指されるVUCAの時代だからこそ、新しいリーダーには組織全体を俯瞰し、縦割りの職能に横串を通していく視点が求められます。

企業の変革に向けた危機感の醸成

―  「経営者視点」の獲得に伴う危機感の醸成とは、どういった意味でしょうか。
西田 新しい時代の企業は、社会課題の解決によって企業価値を高める必要があるとお話ししました。今の時代に経営の舵取りを担う人材には、世の中の情勢やビジネス環境の変化を敏感に察知する能力が求められます。たとえば、自身が所属する企業が環境問題への視点を欠いていたとしましょう。経営陣に危機感が薄く、自社の方針が変わらないのであれば、5年後、10年後の企業の成長は見込めません。高い視座、広い視野から経営を俯瞰できるようになると、「このまま変わらなければ、この組織は今後どうなってしまうのか」という危機感が生まれます。変革を起こすためには、この危機感の醸成が必要不可欠なのです。

―  その結果として変革を推進する力が生まれるのですね。
西田 「変革力」は、文字通り組織を大きく変える力です。経済利益を至上命題とする企業のあり方から脱却し、時には反発する勢力を味方に巻き込み、激動するビジネス環境に適応できる強い事業・組織へと導いていく「変革力」こそ、新しいリーダーに求められる最も重要な要件であると考えています。

ビジョンは企業の変革を駆動する

―  企業価値を向上させながらビジネスを展開するために、「変革力」に加えて必要な要素はありますか。
西田  事業・組織の変革を持続的に推進していくためには、ビジョンの重要性を知っておく必要があります。ビジョンとは企業が実現したい未来や目指すべき将来像であり、企業の存在意義にかかわるものです。名経営者が創業し、今なお成功している企業は明確なビジョンを掲げ、その実現に向けて変革し続けています。社員がビジョンを共有し、ビジョンに共鳴する人材が企業の一員となり、ビジョンの実現を原動力として変革を進めていくのが理想的な変革のあり方です。
「3人のレンガ職人」という有名な寓話をご存知でしょうか。ある村を訪れた旅人が3人のレンガ職人に出会います。旅人が何をしているのかと質問すると、1人目の職人は「レンガを積んでいる」と答え、その苦労を語りました。2人目の職人は「大きな壁を作っている」と答え、労働で家族を養えるありがたさを語りました。3人目の職人は「後世に残る教会を作っている」と答え、村人みんなが笑顔で集える場の建造に携われる喜びを語りました。この寓話は、ビジョンをもって働くことの意義をよく表しています。
 1人目のレンガ職人だけで構成された企業のパフォーマンスが低く、全員が3人目のレンガ職人のように働ける企業のパフォーマンスが高いのは自明の理でしょう。3人目のレンガ職人はレンガを積む行為の先にあるビジョンが見えていますので、目的達成のために自分がどうすればよいかを考え、自発的に動くことができます。自分たちが所属する企業がなぜ存在しているのか、何を目指しているのかを理解し、自分の言葉に落とし込み、同じビジョンを共有する仲間と共通の言葉で議論する。すると企業は変革に取り組もうとする組織風土に変わっていきます。企業において新しいリーダーを育成する取り組みは、ビジョンをもった3人目のレンガ職人を社内に増やす取り組みでもあるのです。

ありがとうございました。続く後編では、VUCA時代の次世代リーダー育成に必要な学びの全体像や自己変革の重要性など、次世代リーダー育成の方法論とそのポイントについてお伺いしていきたいと思います。


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