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コラム
❒講師インタビュー:(後編)次世代リーダー:VUCA時代に求められる新しいリーダー像
後編:新しいリーダーをどのように育成するか?
VUCA時代に求められる新しいリーダー像について、関西ビジネスインフォメーションパートナー講師であり、「次世代リーダー育成プログラム」を共同開発された西田泰典氏にお伺いする本コラム。前編では新しいリーダーに必要な視点や要件についてご解説いただきました。後編となる今回は、次世代リーダー育成に必要な学びの全体像や自己変革の重要性など、次世代リーダー育成の方法論とそのポイントについてお話を伺います。
次世代リーダー育成のポイント①自己変革を起こす
― VUCA時代の新しいリーダーを育成するための学習のポイントについて教えてください。
西田 次世代リーダー育成のための学びのプロセスにおいて、私が重視しているポイントは①自己変革、②経営陣・上司の巻き込み、③異業種の事例からの学び、④フォローアップによる学びの定着、の4点です。なかでも自己変革は、次世代リーダーにとって欠かすことができないプロセスです。
私が担当する次世代リーダー育成研修の全体構成では、はじめに経営者の役割、ビジョン、組織変革の重要性といったテーマについて講義し、リーダー候補者に議論していただきます。次いで「今後、自分はどのように変わらなくてはならないか?」と考え、自己変革の必要性を自覚するよう意識づけを行います。価値の高いアウトプットを生み出すためにはまず自己変革を起こし、そこから行動変容に繋がる学習プロセスとその仕組み作りが欠かせません。
その後、MBA(Master of Business Administration)プログラムのミニバージョンとして「財務計画・組織変革」、「経営戦略・事業戦略」、「マーケティング」、「事業創造」などの各テーマを1~2ヵ月ごとに継続的に学んでいきます。一般的には半年~1年の学習期間となりますが、学習内容も含めて企業やリーダー候補者の状況・目標に応じて調整します。学びのインターバル期間で特に重要なのは、各リーダー候補者が自身の仕事に学びを応用できるかを検討し、実務に戻った際に業務に活かす実践経験を積み重ねていくことです。自らの頭で考え、実務のなかで気づきを得る。すると自己変革が得られ、行動変容が促進されると考えています。
― 行動変容に至るプロセスで、次世代リーダー育成のための学びはどのように機能するのでしょうか。
西田 目まぐるしく変化する環境で成果を出し続けるためは、自身が柔軟に変化し続けなければなりません。以前、管理職になって1~2年目で経営幹部候補に選ばれた方がおられました。管理職に登用される前は高い成果をあげ、何度も表彰を受けていた方でしたが、管理職になってから成果を出すことができずにいました。そんな時に経営幹部候補となり、プレイヤーではなく経営者の視座・視野・視点でチームをマネジメントする思考を学ぶ機会を得たのです。その役割は、ビジョンの達成に向けて中長期的な戦略を立て、部下の強みを引き出し、チームとしての成果に繋げること。その方はチームの目標と自身の新しい役割を理解し、行動変容を起こすことができました。
次世代リーダー育成のポイント②経営陣・上司を巻き込む
― 2つめの「経営陣・上司の巻き込み」とは、どのような工夫でしょうか。
西田 次世代リーダー育成の学びの仕上げとして、最後にスライドを使った成果発表の機会を設けています。この発表の場には他のリーダー候補者や講師だけでなく、自社の経営幹部の方々にもオブザーバーとして参加いただきます。こうした取り組みを行ううえでも、経営幹部の方々に次世代リーダーを育成する意義を共有いただくことが何より重要です。
若手が組織や事業の変革の必要性を説けば、内部からの反発や抵抗は必ず起こるものです。
抵抗勢力をうまく自分の側に引き込んで意思決定を進めていくために、机上の空論ではない説得力が求められます。成果発表は変化を厭う相手をプレゼンテーションで説得する社内政治の疑似体験であり、「どうやって人を巻き込んでいけば組織が動くのか」を具体的に学ぶ場でもあります。
次世代リーダーの育成には経営陣だけでなく、上司の理解と協力が欠かせません。最初に行う上司向けのガイダンスでは、研修中の悩みや相談についてのフォロー、提出課題へのコメントなどをお願いしています。「部下が何を学んできたのかわからないからアドバイスができない」を解消すべく、上司にリーダー候補者が学ぶ内容を毎回伝え、学びの進捗状況を上司向けの中間報告会でフィードバックも行います。また、最後の成果発表で筋の良いテーマを選ぶためにも、業界・企業に特化したアドバイスができる上司の方々の協力が非常に重要となります。新しいリーダーの育成が難しい課題であるからこそ、経営陣や上司が環境作りの一環を担い、サポートしていく姿勢が必須なのです。
次世代リーダー育成のポイント③異業種の事例から学ぶ
― 3つめの「異業種からの学び」は、MBAを取得されたご経験に基づくお考えですね。
西田 その通りです。経営戦略のセンスを高めるには、フレームワークとケーススタディの両輪が必要です。フレームワークは先人が考え抜いて生み出したものですので、学べば高い効果が得られます。一方、ケーススタディではできるだけ多くの事例に触れることが重要となります。たとえばハーバード・ビジネス・スクールのMBA生たちは、2年間で500もの事例を分析して「なぜこの会社は成功しているのか」、「自分が経営者ならどうするか」と考え、問題解決のために必要な法則や原理を導き出す訓練を積んで。
特に私がおすすめするのは、異業種の事例を取り入れることです。同業種のベストプラクティスを完全にコピーできたとしても、その企業に追いつくだけで終わってしまいます。しかし異業種の事例を取り入れ、咀嚼してブラッシュアップするとイノベーションが生まれるのです。リーダー候補者にはできるだけ多くの異業種の事例に触れ、目についた事例を自社に置き換えてみる習慣を身につけてほしいと思います。
次世代リーダー育成のポイント④フォローアップで学びを定着させる
― 「フォローアップによる学びの定着」には、どのような手段を活用しておられますか。
西田 リーダー候補者は各テーマを長期間にわたって学ぶため、これらの学びを現場に持ち帰り、インターバル期間に実践するためのシステムやツールが必要です。提出された事前・事後課題の添削やフィードバック、成長度のアセスメント、eラーニングによる予習・復習などにより知識の定着を目指しています。
これらのシステムやツールを運用するうえで、私が重視しているのはリーダー候補者との信頼関係です。キックオフの面談では1人ひとりと時間をかけ、仕事の悩みやプライベートも含めて互いに自己開示します。するとインターバル期間に行う個別面談で相談対応、意見交換が円滑に進み、適切なフォローアップが可能になるのです。
おわりに:“HOW”から”WHAT”へ
― 最後に、企業の未来を考えるうえで次世代リーダー育成の意味を教えてください。
西田 次世代リーダーの育成は、遠い未来のための漠然とした取り組みではありません。VUCA時代の企業には、自身で問いを立てて対応を考えられる人材が必要です。しかし、われわれは与えられた問いをどうやって解くか(HOW)に偏った教育を受けてきたため、何を解くか(WHAT)という思考に慣れていません。与えられた問いを疑って自身で問いを立て、解を模索する人材の育成はVUCA時代の企業に求められる課題の1つです。すぐそこに迫った未来のために、自ら問いを立て、事業と組織を変革する人材を育ててみませんか?
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