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複雑化する時代の思考法~創造性を生む脳と組織をつくるには?

人は誰しも、「ふと気づくとぼんやりしてしまっていた」、「何もせずに時間を無駄にしてしまった」と罪悪感に駆られた経験があるのではないでしょうか。ビジネスのあらゆる場面で無駄を省き、業務効率化が推進される昨今では、仕事中に「ぼんやりする」ことはあまりよいイメージがないかもしれません。
しかし近年の脳科学では、情報のインプットを止めてぼんやりすることが、有意義な脳の活動であることがわかってきました。

本稿では、脳がぼんやりした状態で活性化する脳領域「デフォルトモードネットワーク」と、ビジネスにおいて必須ともいえる創造性・イノベーションとの関係について考えてみましょう。

創造性は脳のアイドリングタイムから生まれる

1.デフォルトモードネットワークは「ぼんやり」、中央実行ネットワークは「集中」

近年、脳には大きな3つのネットワーク(回路)があることが明らかになりました 1)
1つめのネットワークは、脳がぼんやりしているオフ状態のときに働く「デフォルトモードネットワーク」です。
2つめのネットワークは、脳が何かに集中しているオン状態で活動する「中央実行ネットワーク」で、課題を実行・解決するときなど、脳が明確なゴールを目指して思考している状態で働きます。
3つめのネットワークは、デフォルトモードネットワークと中央実行ネットワークを切り替える「顕著性ネットワーク」です。

3つのネットワークがそれぞれ関連しあうことで、私たちの脳の状態は刻々と変化すると考えられています。これを「トリプルネットワーク理論」といいます(図)。

集中した状態で働く中央実行ネットワークよりも、ぼんやりしている状態で働くデフォルトモードネットワークのほうが脳の疲労は少ないように思われるかもしれませんが、脳のエネルギー消費量は2つのネットワークでほとんど変わらないといわれています。

何かの課題をしていてふと意識が逸れ、過去の記憶や現在抱えている懸案、未来への予測がとりとめもなく浮かんできて自由に結合し、急に新しいアイデアがひらめいたことはないでしょうか。この現象をマインド・ワンダリング(心の迷走)といい、デフォルトモードネットワークが活動しているときに起こります。デフォルトモードネットワークは脳の休息ではなく、情報の整理や情報同士の結びつき、さらには「創造性」に関わる回路として近年認知されているのです。

2.「ぼんやり」は拡散的思考、「集中」は収束的思考

では、創造性とはどのような思考プロセスなのでしょうか。創造性に関する研究では、新しい思いつきを次々に生み出し、広げていく「拡散的思考」と、その後に思いつきを自己検閲し、論理的に最適解を絞り込む「収束的思考」があるとされてきました 2)。拡散的思考はぼんやりしたときに働くデフォルトモードネットワーク、収束的思考は集中時に働く中央実行ネットワークに関わると考えられています。
創造性と脳の3つのネットワークの関係性にスポットを当てた近年の脳科学研究により、創造性が高いといわれる人の脳ではデフォルトモードネットワークと中央実行ネットワークが同時に働いていることがわかってきました 3)。ただ、多くの人はそんな複雑な作業を意図的に行うことはできません。
では、どうすれば私たちの脳、そして企業組織は創造性を生むことができるのでしょうか?

創造性を生む脳とイノベーティブな組織を作るには

 「アイデアを出すぞ!」と意気込むと、脳は中央実行ネットワークに切り替わり、自由な発想からは遠ざかってしまいます。まずは集中して情報を収集し、良質なインプットを行うとよいでしょう。その後、インプットした情報をいったん「寝かせる」、あるいは「あたためる」つもりでぼんやりしてみます。ちょっとした散歩や仮眠も有効とされています。すると脳はデフォルトモードネットワークに切り替わり、拡散的思考が始まります。新しくインプットされた情報と過去の情報が自由に結びつき、新しいひらめきが湧いてきたら、自己検閲せずに心にメモするにとどめておきましょう。その後、ひらめきや思いつきの価値を中央実行ネットワーク/収束的思考で検証するのです。このプロセスを繰り返すことで、新しいイノベーションに繋がる何かが生まれるかもしれません。
ただ、「ぼんやり」をほどよいタイミングで切り上げるのは難しいものです。デフォルトモードネットワーク/拡散的思考と中央実行ネットワーク/収束的思考を意識的に切り替えるには、「ポモドーロ・テクニック」と呼ばれる時間管理法が1つの解決策になります。ポモドーロ・テクニックはタスクの集中度を上げるために、たとえば25分間の集中的作業と5分間の休憩を交互に繰り返すメソッドです 3)。自分でタイマーを設定してもいいですし、ポモドーロ・テクニックのアプリも開発されています。ただし休憩時間にSNSを眺めたり、動画を観たり、音楽を聴いたりすると脳がデフォルトモードネットワークに切り替わりませんので、インプットを能動的に止めて「ぼんやり」することが重要です。
また、個人ではなく組織において創造性を高める手法として、ブレインストーミングが解決策の1つになるかもしれません。ただ、組織で実践されるブレインストーミングでは他者の目があるため、「こんな思いつきはダメなんじゃないか」と無意識の自己検閲が働くほか、アイデアが浮かんでも発言するタイミングがつかめない、といったさまざまな課題があります。組織が脳のようにイノベーティブな発想を生むためには、メンバー個々人が自由にアイデアを出すデフォルトモードネットワーク/拡散的思考のフェーズと、それらのアイデアを持ち寄り、互いの知識や情報を結びつけながらブラッシュアップし、最終的に最適解を絞り込んでいく中央実行ネットワーク/収束的思考のフェーズが必要ではないでしょうか。あらゆる無駄を省き、目的地に向かって一直線に走るような組織のあり方ではなく、ぼんやり散歩するような時間の余裕をもち、オン・オフを切り替えながら、粘り強く柔軟に思考する組織のあり方が、創造性とイノベーションにおいては重要かもしれません。

References
1)Menon V. Large-scale brain networks and psychopathology: a unifying triple network model. Trends Cogn Sci. 2011; vol. 15: pp.483-506.
2)Guilford JP, et al. The nature of human inteligence. New York, McGraw-Hill, 1967
3)Beaty RE, et al. Robust prediction of individual creative ability from brain functional connectivity. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018; vol. 115: pp.1087-1092.
4)ポモドーロ・テクニック:世界が実践する時間管理術はこうして生まれた(2022年6月8日閲覧)
[https://www.newsweekjapan.jp/stories/carrier/2019/03/post-11867.php]

 

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