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テレワーク時代の思考法~ティンバーゲンの4つの「なぜ」

テレワーク時代に必要な論点整理の枠組み

近年、多くの企業でテレワークとWeb会議が導入されるようになりました。Web会議では対面での議論に比べて「表情や視線、声のトーンが読みづらく意思疎通が難しい」、「整理された内容を誰かが一方的に話し、自分は聞くだけでなかなか発言するタイミングがつかめない」といった声をよく耳にします。実際、1人の話者が長く話す傾向があるWeb会議は言語情報の比重が大きく、論点をスピーディに整理・把握し、議論を活性化する方法が求められます限られた会議時間と発言機会のなかで的確に意思疎通をはかり、コミュニケーション・ロスを防ぐことがテレワーク時代の新たな課題の1つといえるでしょう。

私たちの脳は質問されること、答えを出すことを機能的に「快い」と感じます。クイズやなぞなぞがいい例ですね。一方で、脳は「なぜ?」という問いに対応する答えは1つだけと思い込んでしまいがち。特にWeb会議では一問一答になりやすく、対面での会議のような活発な議論に発展しにくいという難点があります。

生き物の行動や進化を扱う学問領域では、「なぜ?」に対する答えは必ず4つある、と考えられています。これをティンバーゲンの4つの「なぜ」”といい、ビジネスなどのさまざまな場面でも応用可能です。ここではがどのような思考の枠組みで、今の時代にどう応用できるのかを考えていきましょう。

ティンバーゲンの4つの「なぜ」とは?


 1973年にノーベル医学・生理学賞を受賞した動物行動学者ニコ・ティンバーゲンは、“生物の行動には4つの異なる「なぜ」が存在する”という説を提唱しました。ティンバーゲンの4つの「なぜ」は、「至近要因」、「究極要因」、「発達要因」、「系統進化要因」に分けられます(図)。

これだけだとよくわかりませんよね。
至近要因」は、ある1匹の生物が生まれて死ぬまでの間に収まるような短い時間軸でのメカニズムや原因です。一方、「究極要因」は、ある生物が何世代にもわたって受け継ぎ、何かを目的として進化する長い時間軸でのメカニズムや適応です。「発達要因」は1匹の生物が限られた一生の間に変化する短い時間軸でのプロセスや成長です。「系統進化要因」はある生物が何世代にもわたって変化する長い時間軸でのプロセスや進化、と言い換えるとわかりやすいかもしれません。

たとえば「ホタルはなぜ光るのか?」という問いと答えを、上記ティンバーゲンの思考法を使って考えると次のようになります。

1)至近要因(短い時間軸でのメカニズム/原因)
Q. どんなメカニズムで光るのか?
A. ホタルの体内に存在する発光物質が化学変化し、腹部末端にある発光器で光エネルギーを放出して光る

2)究極要因(長い時間軸でのメカニズム/適応)
Q. 何のために光るのか?
A. 同種の配偶相手を見つける・引き寄せるために光る

3)発達要因(短い時間軸でのプロセス/成長)
Q. 成長過程においてどのように光るようになっていくのか?
A. 幼虫になる前の卵の段階ですでに発光器を持ち、卵の状態でも光る

4)系統進化要因(短い時間軸でのプロセス/成長)
Q. 進化の過程で、いつどのように光る仕組みを獲得したのか?
A. 昼間に活動する光らない原始的な種から、夜活動する種のうち飛べない雌だけが光る種、雌雄ともに光る種へと進化した

このように1つの問いに対して4つの異なる視点からアプローチすることで、独立した4つの「ホタルが光る理由」を考えることができます。ティンバーゲンは、生物の行動を本当に理解するには4つの「なぜ」をすべて解決する必要がある、といいます。しかし生物の行動や特徴はいまだに謎が多く、4つの「なぜ?」を完全に満たして回答できるほうが珍しいのだそうです。

4つの「なぜ」で論点を整理し、議論の活性化を

では、これをWeb会議上での問題設定に応用してみるとどうなるでしょうか。
たとえば雑誌が売れない時代といわれる今、ある雑誌Aが売り上げを伸ばしているとしましょう。「なぜ雑誌Aが売れているのか?」という問いは、では次の4つに分解できます。

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1)至近要因(短い時間軸でのメカニズム/原因)

Q. どんなメカニズム(特集企画、販売経路やサイズ、おまけ、コラボイベントなど)で売れたのか?
2)究極要因(長い時間軸でのメカニズム/適応)
Q. どのような市場ニーズ/消費者インサイトに合致したか?
3)発達要因(短い時間軸でのプロセス/成長)
Q. 雑誌Aの創刊から、特集企画やプロモーションがどう変化し、どの段階から売れだしたのか?
4)系統進化要因(長短い時間軸でのプロセス/成長)
Q. これまでに発刊された類似雑誌など、雑誌市場全体でどのように位置づけられるか?

このように、4つの視点から「なぜ雑誌Aが売れているのか?」という問いを立てれば、おのずとリサーチすべきポイント、思考の穴がわかります。「なんだ、以前からやってきたことじゃないか」と思われるでしょうか?そう、ティンバーゲンの4つの「なぜ」は決して目新しい思考法や発想法ではないのです。
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Web会議の参加者がそれぞれ異なる「なぜ」を想定していると議論は噛み合わず、論点がどんどんズレていってしまうことも。参加者の一人ひとりがどの「なぜ」について話し合っているのかを理解していれば、脱線したり論点を見失ったりする事態は減るでしょう異なる「なぜ」がまだ手付かずなのかを共有できていれば、議論は活性化するかもしれません。“ティンバーゲンの4つの「なぜ」”で問いの立て方や論点整理の道筋をシンプル化し、テレワーク時代のコミュニケーションを活気づけてみてはいかがでしょうか。

参考文献:
長谷川眞理子 『生き物をめぐる4つの「なぜ」』 集英社新書、99-111頁、2002年

 

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